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Learning about make KAMABOKO

水産練り製品の製造工程

練り製品の製造の中の擂潰

冷凍すり身に食塩や調味料を加えて練り上げる攪拌工程を擂潰(らいかい)と言います。

食感の良い練り製品を作るために魚肉(冷凍すり身)に食塩を加えて摺り、塩溶性蛋白質を溶出・水和させてから澱粉その他の副原料を適切に混合させることを言います。

  1. 荒ズリ:すり身を細かくして塩ズリしやすくする
  2. 塩ズリ:食塩を2.0~3.2%添加して塩溶性蛋白質を溶出させる
  3. 粉ズリ:澱粉や調味料の副原料を投入して練る
  4. 仕上げズリ:添加水を添加して均等な練身にする

擂潰工程での食塩の役割

低濃度の状態では食塩を加えることで溶解性(塩溶)が高まり、高濃度の状態では溶解性が低下して脱水凝集(塩析)状態になります。擂潰工程の中の塩ズリ工程で添加する食塩の目的は塩溶効果の為であり、また味付けの目的で、2.0%~3.0%位になっています。

練り製品の擂潰で添加をする場合は少量ずつ、かつ均等に添加していくことが大切です。

すり身温度が0℃以上にならずに、氷結晶が残っている状態で食塩を添加してしまうと再氷結晶発生し、蛋白質自体が小粒子状に変性して凝固します。粒に凝固したたんぱく質が残り、加熱した時にざらついた物となってしまうので注意する必要があります。

擂潰の方法には、すべての練り製品に通じる適切な方法というものはありません。製品別に適正な方法があり、使用すり身の性質や摺り上がりの温度や擂潰後の工程等も考慮して製品毎に調整するものである。

擂潰工程で考慮すべきポイント

(1)魚種による摺り上がり温度

スケトウダラや南ダラのような寒流域に生息している魚を原料とするすり身と、イトヨリやエソのような暖流域の魚を原料とするすり身はその摺り上がり温度や坐り温度の影響の仕方が異なります。
坐り温度をみてみると、前者は10~40℃で良く坐る傾向がみられ、後者は30~40℃のより高い温度帯で坐る傾向があります。

(2)すり身の等級

陸上すり身から洋上上級すり身とすり身のグレードがあがるにつれて、擂潰方法について 気を使い、注意しなければなりません。つまり、擂潰方法を適切にコントロールすることが出来れば、より良い品質の製品を製造する可能性があるのです。

(3)冷凍すり身の解凍方法

凍結された冷凍すり身は普通-18~25℃以下で凍結保管されています。生産で使用するまでに-3~-1℃まで解凍されます。解凍は使用直前にこの温度までに高めた方がすり身に対して良く、早すぎる解凍はすり身に良い影響はありません。

(4)擂潰温度

半解凍状態の冷凍すり身を荒ズリから始めて、仕上げズリまで温度を徐々に上げていくのが一般的です。
摺り上がり温度には製品特性や後工程の坐りの方法等製品毎に適正値があります。スケトウダラなら上限として一般的に15℃以下にに抑えておく方がいいと言われています。

(5)塩分濃度

練り製品の配合の中で魚肉蛋白への影響力が最も大きいものが食塩であり食塩濃度です。この食塩濃度をコントロールすることで製品に対する食感の調整をすることができる。

(6)塩ズリ時間

サイレントカッターで擂潰する場合、5分間位で塩ズリが終わるが、製品によってはこれ以下でも十分なものもあります。擂潰機の機種、魚種、すり身の種類、塩分濃度等と摺り上がり温度に関係しています。

(7)加水の量と時期

加水することにより摺り上がり温度の調節が、温水や水道水、または氷を調節しながら添加することで可能です。荒ズリ時には温水添加し、擂潰半ばから後半には氷水を用いれば作業時間が短縮できます。また、塩分濃度を適正に調節することが出来れば塩ズリ以前でも、加水量の調整も可能です。

(8)擂潰機の機種

ウスで擂潰した場合、見かけ上硬い練り身になります。またさつま揚げに成型油揚げした場合、繊維状態の魚肉成分が多いために収縮変形することがあります。

サイレントカッターの場合は、魚肉繊維を切断する擂潰のため、練り身の硬さや、揚げた製品の収縮はウスに比べて少なくなります。

真空ボールカッターでの擂潰は、上級すり身を配合した坐り工程を利用する製品に有効です。サイレントカッターに比較してすり身に対して3~5%の加水量アップが可能です。脱気した身質を求めるかに風味かまぼこや成型蒲鉾に適しています。

(9)pH

魚肉蛋白質はpH値の変化の影響を強く受けます。pH6.8~7.3で良好な弾力形成力を示すが、なかでもpH7.1~7.2でとても強い弾力強度となります。

練り製品の具体的な擂潰方法

(1)坐り蒸し蒲鉾

蒲鉾とは一般的に板の上に半円形に成型されたものをいいます。現在はスケトウダラ冷凍すり身を主に原材料として使用し、色が白く旨味があり、坐る力もあるシログチなどが混合される場合もあります。色調は白いものがよく、工程上坐る力も必要であるので、上級や中級すり身が使用されます。

冷凍スケソウダラすり身を使用した場合、解凍は擂潰直前に-1℃位にまで高めるのが良く、プラス側に温度を上げたり、擂潰まで常温で放置しないほうがよいです。擂潰後の摺り上げ温度は、後の坐り工程条件の違いによって、低温坐りなら5~10℃、高温坐りなら10~15℃位が適切な温度です。

塩ズリにおける塩分濃度は、使用する冷凍すり身が上級であれば2.0~2.5%でよいです。そこで荒ズリ時の加水量も多めに添加することが出来て塩ズリを調整できるので、サイレントカッターの場合、5分を目安とします。坐り工程を利用する製品では真空擂潰機が良い効果がみられます。

(2)揚げ蒲鉾

一般的なさつま揚げやごぼう巻のことを言います。スケトウダラ陸上2級、もしくは洋上下級すり身や陸上イトヨリすり身を用いる他、アジ・ホッケ・イワシ・太刀魚なども利用され、使用すり身は一般に下級品が使用されます。

上級冷凍すり身を使用した場合、塩溶性蛋白質の溶出が多くなり、練り上がり身の粘度が高くなり、皮膜形成を起こしやすくなってしまいます。油揚げに伴い内部の気泡が大きくなり、水蒸気による気体の増加も発生します。上級冷凍すり身を使用することで緻密な皮膜が形成されると、気体の放出が出来なくなり、表面の皮膜内側に集積し、体積が増加して風船状に膨れる状態になります。

下級冷凍すり身を使用して擂潰した場合でも、長すぎてしまうと身質が緻密になりすぎ、上級冷凍すり身を使用した際と同様の膨れが発生することがあります。冷凍すり身は下級品を使用し、擂潰時間は短く行った方が揚げかまぼこに適しています。

冷凍すり身を解凍する場合、温度がプラス側(0~4℃程度)になっていても、擂潰時間を短縮したり調整が必要ですが、製品への影響は少ないです。坐り反応が少なく、油揚げ時の品温上昇温度の幅を小さくしたいこと、成形時の練り身を硬くしたいことから、摺り上がり温度は高めの10~15℃くらいが適切です。

擂潰機は荒ズリから摺り上げまでサイレンカッターを使用することが生産能力の面からも普通です。ウスで擂潰した摺り上がり身は油揚げ時収縮したり変形する可能性があるので、冷凍すり身の荒ずりをサイレントカッターで行うとよいす。種物を混合した場合、膨れや収縮する変形はほとんどなくなります。

蒲鉾に及ぼす加熱の方法

1)一般的性質

蒲鉾の練り身は魚肉タンパク質であるので非常に熱の影響を受けやすい特性があります。10℃以上100℃まで様々な温度帯で熱の影響を受けて変性していきますが、その中でも特に60℃前後で良くない影響をする温度も含んでいます。

2)緩慢加熱と急速加熱

蒲鉾の弾力は、加熱方法や形や大きさの違いにより異なります。蒸し加熱でも大型より小型のものの方が強い弾力の製品を作ることができます。一般に緩慢加熱よりも急速加熱の方が強い弾力の製品を作ることが出来ます。

3)坐りと戻り

蒲鉾の摺り上がり身を室温に放置しておくとペースト(ゾル)の状態からこんにゃく状のゲルに変化する。これが所謂、「坐り」という現象です。60~70℃で放置すると、初めはゲル化していきますが、放置を続けると簡単に崩れるものになります。この軟化の変化を「戻り」と言います。

4)蒲鉾の弾力を強める

一般的にスケソウダラ冷凍すり身の場合、50℃よりも低い坐りの温度帯(30~40℃)に成型した練り身を一定の時間坐らせ、蒲鉾構造の形成後、ゲルの劣化の少ないように高温(80~98℃)で加熱すると良いです。

5)蒲鉾を加熱する目的

一つは、坐り反応を促進して魚肉タンパク質を変性させて蒲鉾ゲルを滑らかで強固なものにすること。もうひとつは蒸すことで殺菌や澱粉の糊化、魚肉蛋白質の加熱変性を完了させることです。

練り製品の油揚げについて

練り製品の加熱方法のひとつの油揚げとは、摺り上げた練り身を成形して、最低100℃以上の油でを加熱することです。成形された練り身は油によって熱が伝導し、魚肉タンパク質の変成や凝固、さらに水分が蒸発して、澱粉の糊化現象も起こります。

油で揚げている製品の表層部では高温によってアミノ酸や糖分による褐変現象が起こり、水分が蒸発することで油脂と入れ替わります。また化学的な反応によって新たな香りが発生し、味が濃縮することで風味が向上します。

揚げることと煮ることの加熱方法による違いは、揚げでは旨み成分の流出が少ないことです。揚げと蒸しの加熱方法の違いは、揚げではより早い速度で加熱され、味の濃縮があることです。

揚げと焼きの加熱方法による違いは、表面に加わる温度が揚げは焼きよりも低く、内部に伝わる温度も同様に低く、また平均的な加熱です。揚げの場合は製品の内部に向かって、蒸しと同様でさらに急激な飽和蒸気の加熱を受けます。

油揚げすることの目的

(1)加熱殺菌

練り上げ生身の中には細菌を殺菌しなければなりません。中心温75~80℃に達する加熱をします。

(2)練り上げ身のゲル化

加熱によって製品中の魚肉たんぱく質の凝固変性や澱粉の糊化によるゲル化が完了します。

(3)揚げ色発色

製品には各々適正な揚げ色というものがあります。目的に合わせて、配合の組み方と油温および油揚げ時間をコンロールします。

(4)風味をつける

高温油中での加熱を受けることで風味が向上します。

揚げ色のための添加物

揚げ色発色はアミノ酸と糖分によるアミノ-カルボニル反応とも呼ばれています。配合の中の添加物と油温および油揚げ時間で調整します。

(1)ぶどう糖

揚げ色には欠かせない添加物です。色調は揚げ色として最も普通のさつま揚げに代表される橙色で、油温170~180℃でよく発色します。配合上1.0~2.0%添加されます。

(2)キシロース

黄色~狐色の明るい揚げ色が欲しい時に使用されます。油温160~170℃でその特徴的な明るい揚げ色となりますが、170℃以上ではぶどう糖に似た橙色になります。

(3)醗酵調味料

アミノ酸や糖類を多く含むという意味から揚げ色の発色にも使われます。特にみりんは有効で旧来より橙色の揚げ色出しに使われてきた調味料です。

焼き蒲鉾

一般的には加熱工程に「焼き」が入るものすべてを含みますが、ここでは未加熱の練り上げ身を直火で焼くことで加熱する製品とのとらえ方として、その代表である竹輪に絞って考えます。

ちくわの製造工程

練り製品の焼き

「焼く」という加熱の仕方は蒸しや油揚げよりも高温の200~350℃の気体中での加熱です。熱効率から見ると良くはないが、原料の持ち味を引き出すには最善な方法です。表面には適度な焦げをつけ、内部には適度な火通りをさせる、これが良い焼きと言えます。

焼くことの目的

(1)成形した身の坐り促進作用

竹輪焼成機の上部で蒸気または下部からの熱によって坐りをかけるとしなやかさや弾力のある竹輪ができます。歯ごたえのある高級竹輪を作る場合には品質に大切な要素です。

(2)製品表面の適度な乾燥

坐った後の直火焼きの前に表面をやや乾燥して、指で触ってくっつかない程度にしておくと焼き色が付き易くなります。この乾燥度合いをコントロールすることで焼き皮の厚さも調節できます。

(3)摺り上げ身の最終のゲル化

蒸し・油揚げと同様に加熱凝固させるという意味があります。

(4)加熱殺菌

蒸し・油揚げと同様に加熱処理の目的として重要です。

(5)焼き色発色

坐り工程後のバーナーで焼いた証拠となる外観の焼き色をつけます。目的とする焼き色に対応して、配合の組み方と火加減および焼き時間の調整により発色させます。

(6)焼き風味をつける

焼いた時特有の香ばしい焼きの風味を付けることをいいます。強すぎては焦げた感じがしたり、弱すぎても異質なものに感じるものなので微妙な調整が要求されます。

焼き色調整のための調味配合

(1)ぶどう糖(グルコース)

最も一般的であり、揚げ物にも使用されます。ぼたん竹輪のイボの部分に見られる赤褐色~黒褐色の、焼き色そのものをつける添加物です。1.0%前後添加すれば容易に発色できます。焼き色を付ける為にはなくてはならないものです。

(2)キシロース

黄色~狐色の明るい焼き色を出す時に使用します。高級竹輪で黄金色を発色させたい時に使用すると焼きが容易になります。0.3%位の添加で十分効果があります。

(3)醗酵調味料

みりんが代表的であり、ぶどう糖とほぼ同様の色調が出ます。やや赤みがかった色調になりますが、着色よりも風味改善のための使用が本来の目的です。添加量は、2~5%位が適度な添加量です。

魚肉すり身の味と調味の必要性

魚肉すり身として最も一般的なものはスケトウダラのすり身ですが、このすり身に食塩を加えて蒲鉾を作っても、あまりおいいしいものは出来ません。普通は旨味を感じることはないのです。それは、すり身製造工程中に「水晒し」という、旨味成分を含んでいる水溶性の蛋白質やその他の成分を流失させてしまう工程を経るからです。

従って、スケトウダラに限らず一般的に調味料による味の付加は必要不可欠なのです。

しかし、逆に考えてみると、調味を工夫することでさかなにとらわれず、さまざまな味を作り上げられることになります。風味蒲鉾にみるカニ蒲鉾やホタテ風味が良い例です。

練り製品に於いて、最終製品のおいしさに占める風味を作り出すことに調味料の果たす役割が大きくなっています。風味蒲鉾ではさかなの味は無く、かにやほたてなどの海産物の風味を新たに合成して調味を形成するのです。

揚げ蒲鉾では、ある程度味のある魚種を混合したり、油揚げによって風味や味の濃縮等が増幅され、風味が向上します。蒸し蒲鉾は新鮮なさかなの味は欠かせません。さかなの味を柱にしつつ、さかなの味をバランス良く濃縮し、調味料の手助けで、蒲鉾というさかな以上の味にすることが重要なのです。

練り製品の調味の骨格

味の骨格は、言うまでも無くバランスのとれた調味料の選択にあります。

1)蒲鉾の味はまず、塩と砂糖を代表とする、鹹味と甘味のバランスをとることです。

2)次にこのバランスを保ったままその強さを決めます。次に旨味調味料等で旨みを加えます。

3)天然系調味料を添加し、呈味幅と旨みの増強や製品の特徴づけおよび香気付与を助けます。この段階では味に角が残ることがあるので醗酵調味料が有効です。

4)ひと味欠ける場合、香料を用いたり香辛料を添加して調します。

天然には無い食品でありながら自然の風味を要求される、これがおいしい蒲鉾とはどんなものであるかを、捉えにくくしている理由です。

しかしながら、おいしい蒲鉾とは何か? 

それは消費者にとって満足した蒲鉾を供給でき時、その製品はおいしいと言われるのである。