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すり身(凍結すり身)とは原料魚に以下の処理を加えたものです。
冷凍すり身の誕生の背景としては、
1)スケトウダラの漁獲量増加
2)魚肉ソーセージ、かまぼこなどの需要量の増加
があげられます。
それと同時にスケトウダラを原料とした冷凍すり身の開発が行われました。
当初開発の問題点は、スケトウダラの肉は冷凍変性(凍結によるスポンジ化)しやすいことでした。
そこで
1)肉を良く洗浄
2)砂糖などの糖類を添加
などの技術開発により冷凍変性を抑制することが出来るようになりました(1960年)。
そうして長期貯蔵と大量処理が可能となり、練り製品原料の安定供給とスケトウダラ発展に効果を及ぼします。
漁獲した魚はいったんタンクに貯え、工場内に水揚げし、チェックに合格したものだけをすり身の原料として使用します。
選別し、処理機において頭、内臓、腹須、中骨を除去した後、蝶開き状態にして採肉します。
採肉した肉は、タンク内で十分に水さらしを行い、血液、水溶性タンパク質、脂肪、無機質などを除去します。
水さらしは、すり身の色調の低下を抑制する大事な効果があります。
水さらしを行ったら、ロータリースクリーンにて脱水します。
ここで不要分(水溶性たんぱく質、脂肪、無機質など)の溶出した水分を除去すると共に、次のリファイナー工程でその効果を発揮させるように適した肉の柔らかさに(水分)調整する役割があります。
リファイナーにより、皮、骨、血合いなどの余分な部分を除去します。
リファイナーは肉の供給量、ローターの回転数、網目プレートとローターの羽根との隙間、網目のサイズなど、その時の肉質い応じて適度に調整されます。
この際の適切な操作がすり身の品質に大きく影響します。
リファイナーで処理された魚肉は、次にスクリュープレスにて脱水されます。脱水により、水さらしされる前の本来の魚肉水分値に戻されます。
魚肉に砂糖、ソルビトールなどを加え、サイレントカッターで均等に混ぜ合わせます。
加える添加物は冷凍変性を抑制する効果があります。
これですり身の完成です。
出来上がったすり身は、充填機により10kgずつポリ袋に詰め、冷凍パンに入れられます(この冷凍パンに詰める作業を「パン立て」といいます)。
この後、急速凍結して箱詰めし、金属探知機によるチェックを行ってから保管・搬出します。
水に溶ける酵素蛋白質や色素蛋白質が主で、水晒しにより除かれる。
水に溶けずに塩類溶液に溶けるミオシンとアクチンで、蒲鉾特有の弾力形成に関係があるタンパク質である。
水、中性塩溶液、希酸、希アルカリに溶けない性質があり、筋肉中の結合組織等のコラーゲンや血管組織蛋白質のエラスチンが主である。
水晒しをすることで筋形質蛋白質を除去することが目的です。
しかし、同時に旨み成分をなくしてしまいます。これが魚の風味に欠ける原因で、調味技術が必要で重要になります。
筋原繊維蛋白質と細胞外蛋白質が混ざり合ったものがすり身のたんぱく質です。
しなやかで滑らかな弾力を形成する蒲鉾を作るには筋原繊維蛋白質を多く含む上級すり身を使用します。細胞外蛋白質の割合が多い低級すり身は、滑らかさが減る傾向があります。
目的は凍結変性防止です。
蛋白質の周りの遊離自由水や蛋白質に結合している結合水の離脱を防止する目的があります。
普通、砂糖4.0%・ソルビトール5.0%、及びリン酸塩を0.2〜0.3%添加します。
コンタクトフリーザー等により出来るだけ早く凍結し、氷結晶を少なく抑えることが大切です。
また蛋白質の生化学的変化(鮮度低下)を最小限に留める意味もあります。
保管は-25℃以下が適切です。
カマボコの善し悪しは原料となる冷凍すり身の品質が良いかどうかに影響されます。
冷凍すり身の良し悪しは原料となる魚の新鮮さに影響されます。
新鮮であればあるほど食塩の溶解効果が大きくなり、高品質のカマボコを作ることが出来ます。
蒲鉾の品質を左右する最大の要因は、主原料のすり身の品質にあります。しかし、すり身の品質規格・表示はすり身製造メーカーで各社各様であり、世界的な統一基準がありません。使用する側の立場で、使用時の実際の品質を判定し、対応しないと一定の商品は製造できません。
すり身判定のポイントは、チェック項目を決めておき、一定のマニュアルに従って常に同じ方法により検査判定をすることです。データの集積により正確な判定が可能となります。
洋上物と陸上もの、及びスケソウダラとイトヨリ等他魚種と分類できますが、基本的には同一の方法で判定できます。
1.表示規格に表されている規格と、現物のすり身の品質を正確に判断すること。
2.上級表示のすり身でも中級のジェリー強度など品質が上級の規格外しかないものあるのが実際である。
3.冷凍すり身は練り製品の主原料であるために、練り製品をつくる場合の重要なことは、すり身をを加工する技術ではなく、すり身そのものの品質を正しく評価出来る技術であるといえる。
4.品質の良いすり身を使用して練り製品を作れば、誰でも良い製品が出来る。反対に品質の悪いすり身を使えば、誰がやっても品質の良くない製品が出来てしまう。これが冷凍すり身の長所であり、同時に短所でもある。
仕入れた時ににそのすり身の品質(ゲル形成能)を正確に把握できることが大切である。