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Learning about make KAMABOKO

すり身及び練り製品の今後の課題


練り製品及び冷凍すり身の発展の経緯と現在まで

日本の練り製品の歴史は1800年以上も時代を遡りますが現在のように食品工業として確立したのは1950年頃からです。

当時の日本の練り製品メ-カーは各都市の中央市場で魚を買い付けして自社ですり身にしていました。それを大きく変えたのが冷凍すり身の開発・出現(1960年頃)です。

それまでは製造した生すり身はその日の内に全量使用して蒲鉾(練り製品)まで仕上げていました。しかし冷凍すり身の出現で原料を冷凍保管する事が可能になったことでいつでもどこでも好きなだけ生産することが可能になりました。

さらに板蒲鉾の成型機、自動蒸機、ちくわの自動成型機、焼成機、揚げ蒲用のオートフライヤーなどの機械化も進み、練り製品生産量は飛躍的に伸びました。また1970年頃からはカニ蒲鉾(イミテーションクラブスティック)の製造も始まり、その生産量増加に拍車をかけました。

1980年から1990年にかけて、当時は日本全国に3000社以上のメーカーがありました。

技術革新により安く大量の練り製品が消費者に供給される事になりましたが一方でデメリットも出てきました。当時あまり使用されなかったオホーツク海、日本海、およびベーリング海のスケソウ鱈が冷凍すり身の原料となり練り製品の味が単調になった事です。

日本の練り製品の製造ピークは製品ベースで100万トンを超えた事もあります。(1993年119万トン)その頃を境にして減少し2019年には50万トンまで落ち込んでいます。

また原料の冷凍すり身についても資源ナショナリズムの台頭でベーリング海での冷凍すり身の生産は米国企業が行い日本は製品(スケソウすり身)を買う形態に変わっています。

一方東南アジアのタイでもイトヨリを中心として1970年頃から冷凍すり身の生産が始まり現在ではタイのほか、インド、ベトナム、マレーシア、インドネシアでもすり身の生産がされるようになりました(ピーク時タイから輸入10万トン、2002年)。

今後の見通し

日本では練り製品は広く庶民の間に浸透していますが1970年代のように右肩上がりで消費が伸びることは考えられません。2019年の生産が50万トン、今後人口減少の中でさらに消費が落ち込み10年後には40万トン前半まで減少するかも知れません。

日本のメーカーが廃業、倒産が増える事を懸念されます。Covit-19の影響で一部量販店向けに練り製品を製造しているメーカーは良いようですが利益が伴っていないようです。贈答用、土産用の練り製品を中心に生産している中堅メーカーでは業績が元に戻っていません。

一方海外に目を向けると世界中で78万トン以上すり身が生産され消費されています。Covit-19の影響で欧州、中国の練り製品の消費が一時的減っていますが、長い目で見てみると増えると思われます。

問題は供給量です。すり身の最大の生産国である米国が2020は昨年に比較して2万トン、生産量を落としました。Covit-19の影響もあると思いますが資源管理の問題もあります。 

来年(2021年)の生産数量がさらに絞られる可能性が高くなってきました。単魚種ではスケソウに次に多いイトヨリも最大の供給国のインドが2017年は5,000トン以上輸出していましたが、2020年の予想では1,500トンを下回る見込みです。日本の輸入量を見ても2017年は2万トン、2020年1万200トン(推定)ですから日本メーカーもスケソウにシフトしたい所ですが米国の現状から見て厳しいようです。

今後すり身価格と共に練り製品価格も徐々に上がってくると予想されます。資源(天然)にも限りがあります。蒲鉾メーカーもスケールメリットを生かしてコストを下げる事も考えているようですが大手メーカーしかできない事です。中堅以下のメーカーでは付加価値のある製品を製造して消費者のニーズを掴む事が大切です。

以下2021年の供給予想推定(日本)です(私見、価格は中堅ユーザー渡し)。
(すり身)

道産2級45,000トン320円〜330円
米国スケソウ90,000トンA級480円〜500円
イトヨリ25,000トンタイ、SA450円〜470円 ベトナム(KA300UP)280円-300円
ベトナムミックス10,000トンJ/S100UP 240円〜260円
その他80,000トン